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症例紹介

コインの誤食

今回はオーナーの皆様への注意喚起をする意味で一つの症例をご紹介します。

100円玉の誤食です。

当院に普段から通って下さっている患者様ではなくやや遠方の方から朝電話がありました。

曰く「飼っているまだ若いビーグルが100円玉を飲み込んでしまい、近所の救急対応してくれる動物病院に駆け込んだら開腹手術を提案された。しかしどうしてもお腹を開きたくないので断って帰宅してきた。内視鏡でなんとかならないか?」という訴えでした。

まぁとにかくいらっしゃって下さい。ということでご来院頂き詳しい経過を聞くことにしました。

以下が伺った経緯です。

 

 

駆け込んだ救急対応の病院でまずはX線検査を受けた。

胃の位置にハッキリとコインが写っていたので「吐かせましょう」ということになった。

吐かせる薬を投与すると何度も嘔吐したが残念ながら100円玉は出て来なかった。

これ以上吐かせても埒が明かないので別の手段に移行することになった。

「内視鏡だと掴むことは出来るかもしれないが、胃の入り口を通過できない可能性があるので開腹しましょう」と提案された。

奥様は「仕方がないからお願いします」と言いかけたが、旦那様が開腹は絶対避けたいとのことで開腹せず帰宅。

一晩明けて内視鏡でなんとかしてくれそうな病院はないか?とネット検索して当院にいきつく。

翌日当院に来院。

という流れ。

 

 

飲み込んだ直後から当院来院時まで症状は無く元気・食欲ともに旺盛。

身体検査上も全く異常は感知しませんでした。

早朝に食餌を与えてしまったとのこともあり当院でも再度X線検査を実施させて頂いたところ、まだ100円玉は胃内に存在し、また胃内には食餌らしきモヤモヤした陰影も大量に写っていました。

 

 

 

なので私はオーナー様にこう伝えました。

 

胃の中にあるのはほぼ間違いないので当院で内視鏡処置をすればほぼ100%摘出できます。100円玉が胃の入り口につかえて取り出せないなんてことは当院ではあり得ません。ただし朝ご飯を食べちゃったので胃の中がごはんでいっぱいです。このままでは内視鏡は入れられません。再度吐かせる処置をして胃を空にしてからというステップを踏む必要があります。しかしそれ以前のお話なのですが、この子が小さなチワワなら話は別ですが、ビーグルの体格なら正直に申し上げて何もしないでも便と一緒に排泄される可能性もあります。そちらの可能性に賭けたいというお気持ちもありますか?

 

と訊いてみたところ、いやいや一刻も早く摘出してもらい不安を解消したい。とのこと。

ということでお伝えした通り、吐かせる処置をして(この時も100円玉は出て来ず)、胃が空になったのを確認してから麻酔をかけて内視鏡を実施。

ちなみにこの時は、やれ、どこが痛い、疲れが抜けない、そこが痒い、と最近寄る年波に勝てない不満ばかり漏らす私を思いやったのか呆れたのか、優しい副院長の巡獣医師が「院長は休んでて(引っ込んでて?)下さい」と代わりに内視鏡をしてくれました。

結果、ものの5~10分で摘出。彼女も私と一緒に夜間救急で鍛えられているので内視鏡操作に長けているのです。ついでにX線検査で写っていなかった別の異物も見つけちゃったのでそれも摘出して無事処置を終了しました。

 

今回のような事例について、オーナーの皆様も是非考えて頂きたいと思います。

異物誤飲に限らずですが、慌てて動物病院に行って獣医師に「これは内視鏡では摘出できないので開腹するしかありません」と言われたら、ほとんどのオーナー様は「そうか。専門家の獣医がそう言っているのならそうなんだろう。仕方ない」と考えて開腹手術を受け入れてしまうのではないでしょうか?

受け入れてしまったとしてもオーナー様に罪はありません。だって獣医療の素人なのですからプロの獣医師がそう言うなら従うしかないですよね?

罪は無いですが、そのためにお腹を切られてしまう動物たちは可哀そうです。開腹せずに内視鏡で済めば日帰りできるし、その日の晩にはご飯を食べることも出来ます。しかし開腹手術して胃切開、腸切開となればそうはいきません。何日も入院して痛みの管理、二次感染の管理、食餌の管理を経てやっと退院となりますが、その後も抜糸するまで管理は続きます。雲泥の差です。

 

要するに私がお伝えしたかったのは、動物病院のホームページを見て「内視鏡完備」と書かれていても、文字通り備えているだけでロクに操作もできない病院もあれば、きっちり結果を出す病院もあり、その差は天と地ほど違うということです。

なのでオーナーの皆様は是非それに留意したうえで病院を選んで頂きたいと切に願います。

 

 

 

執筆者プロフィール

港北どうぶつ病院 院長

Hayato Arai