心臓(循環器科)
高血圧 〜検査編〜
今回は血圧測定の検査についてご紹介します。
わんちゃんや猫ちゃんも血圧を測定できます。正常値は犬と猫の全身性高血圧ガイドライン(米国獣医内科学学会 2018)に示されており、正常より低い場合も高い場合も異常ですが、人と同様に中高齢になると高血圧が問題になることが多く、ガイドラインでは9歳以上は健康診断で測定することも推奨されています。
では、高血圧で症状はでるのでしょうか。
ヒトでは高血圧で頭痛やめまいが出ることもあるそうですがほとんどの場合は自覚症状がないので、わんちゃんや猫ちゃんではなおさら高血圧を症状で気がつくということは難しいとされています。
特別困った症状がないなら放置していいのか?というとそうではなく、問題は大きく2つあります。
1つ目は高血圧が心臓、血管、眼、腎臓そして脳神経などの多種多様な臓器に影響を与え短期的あるいは、中長期的に悪さをします。
眼への影響では視神経という眼の奥の神経に障害がでて失明することがありますが、わんちゃんや猫ちゃんでは慣れているご自宅だと視覚がなくなっても一見困ったように見えずにお家の方が症状に気がついないないことも多くありました。
心臓への影響では、心筋が厚く変化し、機能が低下して心不全になり死に至るケースも起こります。
2つ目は、高血圧の背景にはその原因となる病気が無症状で存在することが多くあります。高血圧が発見されると、同時に原因となる病気が判明して治療が開始できたというケースがあります。
検査はヒトと同じ方法で、前肢、後肢、尾にカフというベルトのようなものを巻いて測定するためストレスが少なく簡単に検査が可能です。
とはいえ、私たちも病院の雰囲気や検査の緊張で血圧が高くなることがあります。それを”白衣性高血圧”といいます。本当は正常なのに高血圧の数値が出てしまいます。私たち以上に緊張しやすいわんちゃんや猫ちゃんは、院内で本来の血圧を正しく測るのが難しいことが予測され、実際に高く出てしまうことが多くあります。では、緊張のせいで正確に測れないから検査をしない、検査結果を無視するなどとしてしまうと、本当に異常があった場合に高血圧やその背景にある病気を見逃してしまいます。
検査室で測定した血圧が高かった猫のAちゃん、白衣性高血圧なのか、本当に高血圧があるのかを判断するため、来院されてすぐに診察室でお家の方に抱っこしていただいた状態で血圧を測定してみたところ血圧は正常値でした。ほっと一安心です。過去にお車で血圧測定をさせていただだき正常を確認できた子もいました。
このように試行錯誤をして検査で負担を与えることなく必要な検査を省かず、正確な結果を出すことで適切な診断や治療に結びつくと考えています。
尾で血圧を測定
測定部位や体の大きさに合わせて色々なサイズのカフがあります