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症例紹介

誤食(サランラップの最初の部分)

今回の内視鏡症例報告はなんとも間抜けなタイトルですが新品のサランラップを買って最初にめくる時のアレです。

 

※旭化成ホームプロダクツ株式会社公式ページより

 

 

「引き出しテープ」という名称のようです。

オーナー様が同じものを持参してくれたので、計測してみたところ・・・

 

だいたい1.5cm×7cmぐらいでした。

 

単純な計測値でいえば7㎝ですから、そこそこの大きさですが、ペラペラなので体積としてはかなり小さくなります。

今回はこの程度のものでも詰まってしまうリスクがあるんですよという注意を促す意味でご紹介します。

今回飲み込んだのは猫ちゃんです。6kg超えの立派な体格  6才の男の子でした。

 

一週間ほど前にその「引き出しテープ」をクチャクチャと噛んでいるのをオーナー様が目撃。しかし飲み込んだ瞬間を見た訳ではない。その後から嘔吐を繰り返すようになり、かかりつけの動物病院を受診。X線検査を受けたが詰まってないから様子見てと言われ点滴をしてもらい帰宅。

しかしその後から嘔吐頻度が増してきたため、やはり詰まっているのでは?と心配になりネット検索で当院のことを知りご来院されました。

 

 

来院時の猫ちゃんの身体検査所見は全く正常でした。

血液検査も異常無し。X線検査もしましたが、やはりあの程度のビニール片がX線画像で写ることはなく、腸閉塞などを疑う異常所見も認められませんでした。

 

正直、この時点での私の印象としては、そのサランラップのテープが悪さをしている可能性がゼロとは思わないが、本当に飲み込んでいるのかもハッキリしないし、全然関係ない可能性も充分ありえそうだなと懐疑的でした。

 

私は内視鏡操作が好きなので、これは内視鏡で解決できる!と思ったら強くオーナー様にもやりましょう!と勧めますが、そもそも異物があるのかどうかもハッキリしないし、症状も緊急というほどでもない。そんな場合はオーナー様との相談になります。

今回の場合も、白黒ハッキリさせるならやはり内視鏡は非常に有効だが、もう少ししっかり吐き気の治療をしてみてもいいと思うけど・・・ぐらいのテンションでお話しましたが、今回のオーナー様はもう最初から前のめりで、内視鏡をしてもらうつもりで来ました!と仰るので、そんならやりましょう。ということでその日に実施しました。

 

結果としては、胃から腸に入り込む幽門という狭くなっている部分に詰まっていました。

内視鏡で摘出する動画を1分半ほどのダイジェストにしましたのでご覧下さい。

 

 

こういう異物は基本的に内視鏡で摘出しやすく、今回も実際の処置トータルの時間は5分ほどしかかかっていません。

 

 

今回のような状況を不完全閉塞と呼びます。

一般的というか典型的な消化管閉塞は完全閉塞と言い、例えばボールとか布の塊とかがギチギチに詰まって何も通過できない状況を言います。当然食べ物どころか水すらその先に進めないので激しく嘔吐するし、強い炎症を起こしグッタリしてしまうことが多く、即命に関わる緊急性の高い病態です。

 

それに対して不完全閉塞とは今回の症例のように異物がつかえてはいるけど、隙間があるので食べたものもある程度は通過できるし、症状もマイルドで、まぁ嘔吐は何度かしているけど全然元気が無いわけでもない。ぐらいの場合も多く、オーナー様もなんとなく様子を見てしまったり、獣医師もただの胃炎でしょうと誤診して吐き気止めを投与し続けるけど治らないなぁみたいなケースも多く、診断をつけるという意味では完全閉塞よりずっとわかりにくく厄介です。

 

今回もいきなり内視鏡処置をすべきか迷ったのですが、オーナー様の強い希望に後押しされて実施したところ、良い結果を得られた一例と言えます。

このように当院では内視鏡処置に限らず、大事な処置や手術などの判断はオーナー様とディスカッションしてそれぞれの事情を考慮したうえで、選択肢を提案していくことを常に心がけています。獣医師の独断で内視鏡や手術等をおこなうことはありませんので、一緒に最善の選択肢を探していきましょう。

 

 

執筆者プロフィール

港北どうぶつ病院 院長

Hayato Arai