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症例紹介

犬の皮膚の痒み 〜膿皮症、脂漏性皮膚炎〜

 

【症例】

犬(シー・ズー)、13歳、男の子

【初診時のご様子】

脇の下や内股、手足、耳などが若い頃からずっと痒い

飼い主様はご自宅で3日に1回のシャンプーや免疫療法などとても頑張っていらっしゃいましたが、思うように良くならず、放っておくとあちこち舐めて掻き壊してしまう為、常にエリザベスカラーを着けている状態でした。

皮膚を拝見したところ、赤いプツプツが散在し皮膚の細菌感染が疑われた他、慢性的な皮膚炎による皮膚の肥厚と、頻繁にシャンプーしているにもかかわらず、触ると少しベタつきが感じられました。

【診断】

感染性皮膚炎と、脂漏性皮膚炎の併発

【飼い主様のご希望】

  • 肝臓や腎臓に負担をかけたくないので、薬は最低限にしたい
  • エリザベスカラーを外して生活させてあげたい

【治療】

第一段階

最初は飼い主様のご要望を最優先して内服は使用せず、シャンプーによる感染と皮脂のコントロールからスタートすることにしました。

病院で処方した薬用シャンプーによる薬浴と、マイクロバブルを使用して洗浄を実施した結果、感染は抑えられ皮膚の状態も改善したように見えましたが、痒みは変わらずカラーは外せない状態が続いていました。

マイクロバブルの発生装置は少し前までは数十万円するのが当たり前でしたが、ここ数年で良質なマイクロバブルシャワーヘッドが数千円から手に入るようになったり、月額性のレンタルなどの選択肢が出てきたりして、ご家庭でも使いやすくなって来たように思います。

第二段階

皮膚を掻く事で炎症が起こり更に痒くなる、という悪循環を一旦しっかり断ち切ってあげたかったので、飼い主様と相談の上、血液検査やエコーで肝臓などの状態をしっかりとモニタリングしながら非ステロイド痒み止めの内服を開始したところ、数週間で長年悩んできた痒みは落ち着きエリザベスカラーを外して生活ができるようになりました。

第三段階

薬をできるだけ減らす事を目的として、肝臓にも腎臓にも全く負担の無い注射薬を追加し、飲み薬は週に2回〜頓服(痒いときだけ飲む)に変更しました。

【経過】

痒くない状態が長く続くことで皮膚の炎症がなくなり、厚く硬くなっていた皮膚が少しずつ柔らかい正常な皮膚に戻りつつあります。

この子の場合は、先天的な体質が関与していると考えられるので、シャンプーも薬も全く無しで痒みをゼロにするというのは難しい症例だと考えていますが、皮膚の状態が良くなった事で、シャンプーや薬の頻度を減らしても痒みはほとんど見られず、今もエリザベスカラーは無い状態で過ごせているそうです。

【担当獣医師より】

長く続く痒みの場合、何種類かの原因が絡み合って一つだけの対処法では治らないということがよくあります。また、お家でのケアがどの位できるのか、生活環境はどんな感じ、お薬は上手に飲めるのか、など各個体が違う条件で暮らしています。

どういう状態になったら満足か、どんな治療を希望しているかなどを伺いながら、そのご家庭のその子に合った治療を一緒に作り上げていきたいと思っています。