眼科
治らない角膜潰瘍2 ~乾性角結膜炎 KCS 神経 涙液~

今回の症例はまたまた角膜潰瘍です。
角膜潰瘍に関しては以前もお伝えしたことがありますが、今回はまた別の原因で治らなかった角膜潰瘍です。
【主訴】
1週間くらい前から左眼をずっとつぶった状態で気にしている。かかりつけの病院で左眼に傷があるよと言われ、目薬をもらって点眼しているが良くならない。という理由で当院へ来院されました。
他に、副腎のホルモンの病気が見つかって飲み薬で治療をしている最中とのことでした。
これは来院された頃お家で撮っていただいたお写真です。常に左眼をつぶっている状態でした。
【検査と結果】
シルマー試験紙で涙液量の測定をすると右眼は17㎜と正常だったのに対し左眼は0mmで涙液が全く分泌されていないことが分かりました。また、左鼻も乾燥していました。これはドライノーズと言い、神経原性の乾性角結膜炎(KCS)での典型症状です。
何らかの原因で涙腺や外鼻腺からの水分分泌刺激をする神経に障害が起き、正常に涙を出すことができなくなっていたと考えられます。
この原因として、外・中耳炎といった神経付近の感染性炎症、ホルモン異常の関与も考えられるので全身の検査も行いました。その結果、副腎のホルモン異常と膀胱炎が見つかりました。
ですが、神経原性のKCSの根本原因を特定することは困難でした。
【治療】
抗生剤の全身投与、抗生剤・ヒアルロン酸の点眼、角膜露出軽減の目的で眼瞼縫合をしました。
上記だけでも飼い主様の頻回点眼の頑張りにより潰瘍は良くなっていっていましたが、涙液量は全く回復しなかったため、
涙液などの分泌を促す作用のあるピロカルピン点眼液を点眼・点鼻・経口投与しました。
うまく反応してくれないこともありますが、この子は幸いぐんぐん効果が出て2週間後には涙液量が10mmまで回復し、さらに1週間後には18mmと正常値になりました。
1か月後には減薬し、2か月後には休薬に至りましたが、涙液量は正常を維持できています。
当初は肥満体形でもありましたが、ホルモン治療や食餌療法など全身の治療も続けて、現在はとてもスリム体形になり元気に過ごしてくれています。
【まとめ】
一言で角膜潰瘍と言ってもその原因は様々です。今回は角膜を保護したり治癒を促すために不可欠な涙液が全く出ていなかったことが原因でした。
角膜潰瘍は、簡単に言えば角膜のキズです。キズと聞くと、アクシデント的な怪我として出来るものだと思われがちです。
もちろんそういったものもありますが、他に原因や悪化させるトラブルがなければある程度の期間でしっかり治るはずなのです。
ですから、目のキズがなかなか治らない・良くならない場合は、なにか原因が隠れている可能性があるので、改めてしっかり検査を受けることが大切です。