眼科
涙やけ ~それ、病気のサインかも?!~

今回は涙やけについてです。
(昨年9月より眼科担当獣医師、育休から戻ってまいりました。またよろしくお願い致します。)
涙やけは多くの方がおうちのペットちゃんで経験したことがあるかと思います。なかなか治らずお困りの方もたくさんおられるのではないでしょうか。
今回はそんな涙やけの原因や治療法についてご紹介しようと思います。
そもそも、涙やけとはなんなのでしょうか?誰が言い出したのか、涙で毛が焼けたように変色した状態を「涙やけ」と言っています。英語ではtear stainsなんて表現されています。変色する原因は涙に含まれる成分(ポルフィリンが有力)が毛に沈着し、酸化したり紫外線が当たることによるものと言われいています。唾液で口周りの毛が赤茶色になったりするのも同じことです。つまり涙やけがあるという事は、涙が常に目から溢れているという事になり、実はそこが重要な問題点なのです。
涙は通常、目頭側の瞼の内側にある涙点という穴から流れ出て涙小管・涙嚢・鼻涙管を通って鼻に出ていくようになっていますが、その穴が無かったり、穴が塞がれていたり、通り道の管が詰まったり狭くなっていたりすると、眼の外へ溢れ出てしまいます。また、単純に涙の分泌量が多くなると溢れ出てしまいます。これらの原因に、色々な目の病気(実は目だけではないのですが…)が関わっている可能性があるのです。
まず、涙の分泌が増える時とはどういった時でしょう。痛みや痒みを感じると涙は増えます。(動物も感情によって涙を流したりもするようですが、それは今回は別とします。)なので眼が痛くなる病気、例えば緑内障やぶどう膜炎が原因で涙やけが見られることがあります。また、角膜にキズが出来たり目に異物が入ったりしても涙は増えますし、アレルギーや眼周りの皮膚炎があると痒みが出て涙が増えますし、痒いからと擦ると更に涙は増えていきます。アレルギーや皮膚炎があるとまぶたが腫れるという問題も起きます。まぶたが腫れると眼に涙を留めておくスペースが浅くなりこぼれ落ちやすくなったり、腫れたことでまぶたのそばの毛が眼に触れて毛を伝って涙が流れ出たり、腫れたまぶたが涙点を塞いで涙小管に流れ込めなくなったりというトラブルも起きます。
まぶたが腫れる原因は他に、マイボーム腺炎や麦粒腫や霰粒腫と言った分泌腺の感染や炎症、分泌腺の詰まりなどの関与もあります。この分泌腺の異常は感染のような外的要因のみならず、分泌機能不全や分泌液の性状異常などが原因のことも多々あり、小型犬種にとてもよく見られます。この分泌腺の異常が原因で睫毛重生(通称:逆さまつげ)や異所性睫毛などが発生し、それらが結果的に涙液量も増加させ涙やけを助長しているケースも見られます。マイボーム腺は涙の脂質を分泌する役割をしており、この脂質は眼のコーティングと涙液の蒸発防止をしています。この分泌が悪かったり質が悪いと結果的にはドライアイになってしまいます。これはヒトのドライアイととてもよく似ていて、動物では質的ドライアイとも表現されます。「涙がこぼれて涙やけが出来ているのにドライアイ?」と思われるかもしれませんが、これは本来眼に留めておくべき涙が留まることなくどんどん外にこぼれ出ていってしまっている現象が起きているため、ドライアイへ向かうのです。
その他、鼻涙管は短頭種(お鼻の短い犬種)では細かったり湾曲していたりして流れにくかったり、歯根膿瘍や慢性鼻炎などで鼻涙管が詰まっていたりすることで涙の流れが悪く、涙やけを作っていることなどがあります。
このように、涙やけが起きる要因には様々な原因が隠れていることがあります。実際のところ、もともとの形態的特徴として涙やけが出来やすい犬種がいるのも事実ですが、その状態を放っておくとドライアイなどのトラブルへ向かう可能性があるため、涙やけのある子は一度しっかり目の検査を受けることをお勧めいたします。